2つの検査を受けて、糸球体の状態を調べる
腎臓はその機能が著しく低下しないと、自覚症状が現れてきません。しかし糸球体は一度損傷すると元の状態に戻すことができないため、糸球体の損傷が進む前に、治療を行うことが必要です。
腎臓の機能の低下を発見するために有効なのが「たんぱく尿検査」と「血清クレアチニン検査」です。これらは人間ドックや健康診断で一般的に行われるものですが、健康診断では、結成クレアチニン検査が含まれていない場合もあります。
たんぱく尿検査とは
尿を採取して、尿中のたんぱくの濃度を調べる検査です。たんぱくは体に必要なものであり、また比較的サイズの大きな物質です。腎臓の働きが正常な場合は、糸球体で濾過されずに体内に戻ったり、ろ過されても腎臓内で再吸収されるので納入には排出されません。ところが糸球体のフィルターとしての働きに異常があると、たんぱくのような大きな物質も尿中に排出されるようになり、「たんぱく尿」が出るようになります。
検査の結果が「-」の場合は、たんぱくの濃度が低く、正常であることを示しています。「+」の場合、たんぱくの濃度が高く、異常があることを示しているので、すぐ専門医を受診してください。
血清クレアチニン検査とは
「クレアチニン」は、血液中に含まれる老廃物の一種です。血液検査によってその濃度を調べます。糸球体が正常に働いている場合、クレアチニンは濾過されて尿中に排出されます。しかし、慢性腎臓病で糸球体の働きに異常があると、クレアチニンが十分に濾過されず、尿中に排出することができなくなるので、血液中のクレアチニンの濃度が高くなります。
血清クレアチニンの基準値は、性別や年齢で異なります。基準値より高い場合は、腎臓の働きに異常がある可能性が高いため、すぐに専門医を受診しましょう。
慢性腎臓病の診断
検査の結果から腎臓の機能が評価され、診断が確定する
2つの検査の結果、どちらか一方の異常でも、3ヶ月以上続くと慢性腎臓病と診断されます。また、検査の結果から、腎臓の機能がどの程度低下しているかもわかります。血清クレアチニンの値を基に「糸球体濾過料(eGFR)」を算出し、たんぱく尿検査の結果と合わせてみることで、慢性腎臓病のおおよその重症度が判定できます。
eGFRの数値が高いほど腎臓の濾過機能はよく、60以上であればステージG1かG2で正常とされます。しかし、eGFRが60以上でも、尿たんぱくが「+」の場合には、軽度または中等度の慢性腎臓病とされます。eGFRがある程度保たれていても、たんぱく尿が出得ている場合、将来、透析療法や腎臓移植が必要になる「末期腎不全」のリスクが高いため、両者を合わせて評価することが重要です。
自覚症状は、腎臓の機能が低下しても、ステージG1~G2程度まではほぼありません。しかし、さらに腎臓の機能の低下が進むと「腎不全」に至り、「むくみ」「めまい」「吐き気」などが現れることがあります。
特に検査が勧められる人
慢性腎臓病を早期発見するには、年に1回はたんぱく尿検査と血清クレアチニン検査を受けることが大切です。異常があった場合は、半年に1回など、状況に応じて検査の頻度を増やします。
特に、生活習慣病は慢性腎臓病の原因になります。「高血圧」「糖尿病」「メタボリックシンドローム」「肥満」がある人や、「LDLコレステロール値が高い」「喫煙習慣がある」という人は、積極的に検査を受けるようにしましょう。また、「急性腎炎」「ネフローゼ症候群」などのほかの腎臓の病気を発症したことがある人や、家族に何らかの腎臓の病気を発症した人がいる場合も、定期的に検査を受けることが勧められます。